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名月に寄せて

今年の十五夜の月は真に美しいものでした。西の空の中空に浮かぶ満月を、ずぼらにも寝ながら見続けておりました。このようにじっくりと月を眺めたことは、我が生涯において初めてのことでした。大宇宙に浮かぶ地球と月の関係を思い浮かべていて、不思議な感覚に襲われていました。
しかし、今やその月に存在するであろう資源を巡る競争が始まっていることを考えると、人間の欲望の業の深さを思わずにはいられません。月まで出かけて、一体何をしようとしているのか、少し理性を働かせれば、そのバカバカしさに気付く筈です。マスコミに限らず、すべての事物を経済効果で判断しようとする風潮が、何の疑問もなく世間に受け入れられています。云い替えれば、金高ですべてを測ろうとしているのと同じです。人は文化と云う、数値化できない世界をも必要とする存在であることを忘れる訳には行きません。
名月を見詰めていて、古いお話ですが、金色夜叉の『ダイヤモンドに目がくらみ・・・』の一節を思い出しました。

不羈庵(九州文学編集委員)

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