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漠然たる不安

今、世間に漂う漠然とした不安は一体どこから来るのでしょうか? 世界の各地で頻発する紛争や政争がもたらしているとも云えますが、それはいつの時代でもあったことです。悲壮感と云うよりも、逼塞感に近いような気がします。国連は機能しなくなり、それに代わるものは存在しません。打つ手がなくなり、お手上げの状態が出現しています。
どの時代にしろ、文明発生の根源にある概念は、人間に都合の良い環境を作り出すことでありました。それは効率性・安全性・快適性・普遍性の要素から構成され、人類の発展に寄与して来たと云えます。現代文明において、それはある程度達成されたようにも見えます。国々によってその差はあると思いますが、ほぼ達成されたと云えないことはないと考えます。勿論、個々人の状況に違いがあるのは理解しますが、すべての個人を同じレベルにすることは不可能です。これを強制的に行うことは、誰も望まないことです。
なにを申し上げたいかと申しますと、現代文明は人間の五感で捉えられる範疇を越え、実感なき世界を創り出してしまった。それは千三百グラムの脳がつくり出した世界なのですが、その同じ脳が様々な感情も生み出します。感情に論理性や効率性や普遍性はありません。
生物である人間は、この相反する作用を齎す脳を持つことで、その矛盾に悩むことになります。脳に齎される情報のすべては人の五感から齎されたもので、脳の中で整理統合された情報と同じ五感から発生した感情が複雑に交錯しています。しかしそのことで思索を深め、豊かで変化に富んだ社会を作り出したとも云えます。

ところが現在問題視されている生成AIやチャットGPTの出現は、もはや五感を通して情報を入手することができません。無条件に、あるいは知らず知らずの内にAIの判断に身を委ねることになり兼ねません。今やあらゆる場面に実感なき世界が出現し、そのことが動物的存在である人間を不安に陥れている、そんな思いに駆られて仕方がありません。                                 

不羈庵(九州文学編集委員)

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