創作に関する一つのヒント
今回は、こんな風に考えたら小説を書くのが難しい作業ではなくなるのではないか、と考えていることを申し上げます。
これまでの経験で、創造の女神がわが身に降りてきて言葉が次々に湧き出てくるなどということはない、ということはわかっています。
言葉が先にあるのではなくて、創造(想像)した世界、あるいは過去に自分が体験しその中で悪戦苦闘した状況があって、その世界なり状況を人様にわかってもらうために、言葉を使うのです。
その世界や状況のイメージが頭の中に浮かび上がったら、その中での人の動きの細部をあれこれ思い出したり想像したりしてみます。そうしているうちに、その世界の中で人物が勝手に動き始めます。その人物の動きを、テレビでリポータがやっているように現場リポートすればいいのです。
要するに、紙の上で作品世界を作るのではなくて、まずは自分がその世界へ入って行くのです。こんな風に考えたら、小説を書くのが少し楽に思えませんか?
九州文学 編集長 木島丈雄